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泉鏡花文学賞に田中慎弥さん「ひよこ太陽」

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金沢市が制定する第47回泉鏡花文学賞は8日、田中慎弥さん(46)の「ひよこ太陽」に決まった。授賞式は11月9日、金沢市民芸術村で行われ、田中さんに八(はち)稜鏡(りょうきょう)と副賞100万円が贈られる。

 選考委員会は東京の赤坂浅田で開かれ、五木寛之、村松友●、金井美恵子、嵐山光三郎、山田詠美、綿矢りさの計6氏が出席した。

 選考後、取材に応じた綿矢氏は「私小説か妄想なのか、現実とフィクションのはざまで揺れ動く作家の気持ちが切実に書かれている。そのディテール(細部)が審査員の心をつかんだ」と評価した。

 田中さんは2012年に「共喰(ともぐ)い」で芥川賞を受け、受賞時に、選考委員だった作家の石原慎太郎東京都知事に触れて「都知事閣下のためにもらってやる」と発言して話題になった。

 受賞作「ひよこ太陽」は40代の男性作家が、何のために原稿を書いているのかを迷う日々をつづった私小説的な物語。綿矢氏は「題名も弱そう。飾り気のなさ、丸腰な感じが斬新だと感じた人も多かったのではないか」と語った。

 自宅で受賞の連絡を受けた田中さんは電話取材に対し、「文学賞は久々なので非常にうれしい」と喜びを語った。受賞作については「いかにも私小説という看板をしたあくまでもフィクション。特に意識したわけでないが、単に日常を描く上で変化を付ける意味で、幻想的な要素も入ってきたと思う」と述べた。

 鏡花作品はこれまであまり読んでおらず、鏡花は自分にとって遠い存在としながら「名前が付いた賞をいただき、今後、意識して活動していかないといけない」と抱負を語った。

 泉鏡花文学賞は1973(昭和48)年、金沢市が全国で初めて自治体主催の文学賞として制定した。今回は昨年8月1日から今年7月31日に刊行された文芸作品から「ロマンの香り高い作品」を基準に選考した。

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